LECTURE
特集講義
人間が二足歩行をする以上膝関節には必然的に負担がかかります。運動強度が増すほどその度合いは強くなり僅か4mm程度の関節軟骨が次第に磨耗してしまいます。さらに直接骨同志が接触する状態になると関節包が炎症を起こし水が溜まる状態となり、関節面の不整化が進み遂には変形、硬化してしまいます。これを変形性膝関節症といい、程度は異なるものの中高年者や運動選手に多く発症します。(図4)
関節軟骨は糖蛋白質であるプロテオグリカンという弾力性のある物質が大量の水を保持し、コラーゲンに代表される蛋白質との共同作業で軟骨の弾力性を保つことでショック吸収能を有することが可能になります。プロテオグリカンは従来ムコ多糖類と言われていたグリコサミノグルカンの集合体です。コンドロイチン硫酸*、ヒアルロン酸*、ケタラン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸等グルコースとアミノ酸の高分子配合体です。変形性関節症の治療は消炎鎮痛剤の内服や湿布を行っても根本的な治療にはなり得ず、ヒアルロン酸の関節内注入が唯一の治療手段ですが、週1回程度継続して行う必要がありかなりのストレスになります。Jason Theodosakis博士がその著書The Arthritis Cureでグルコサミン*の有効性を発表して以来世界中で多くの人がその恩恵に預かっています。
グルコサミン
天然の代表的アミノ糖で、動物体内ではムコ多糖の構成成分として軟骨や結合組織に広く分布する。蟹・エビ等の甲殻類の殻より抽出される。欧米で変形性関節症の治療に貢献し、特に欧州では急性及び慢性関節炎の治療薬として承認され(米国では治療用サプリメント)多くの患者の痛みを軽減した。日本では塩酸塩が食品添加物として認められており多くのメーカーが販売している。一日量1500mgが摂取の目安とされる。グルコサミンはプロテオグリカン構成の主成分でありまた、コンドロイチン*との相乗効果でより多くのコラーゲンとプロテオグリカンの生成を促し、健康な新軟骨組織の形成を促進する。グルコサミン・コンドロイチンの補給は関節軟骨や椎間板の補修・補強も可能とされる。
ヒアルロン酸
哺乳動物の結合組織に分布しているグルコサミノグルカンで、人体では腱・皮膚・骨・目の硝子体に分布している。水和性が非常に強く体内では蛋白質と複合体を形成して粘調な溶液やゲルを作り・組織構造の維持・潤滑作用を担っている。特に皮膚表面ではヒアルロン酸が薄い皮膜を形成し水分蒸発を防ぎ、またその水和力で皮膚の保水性を保ち、皮膚の滑らかさ粘弾性を維持・回復して若々しい新鮮な肌に見せる効果がある。ヒアルロン酸の水和力は自然界で(おそらく化学合成物を含めても)最大と言われ、僅か2%水溶液でさえ残り98%の水と水和してゲル状物質を形成している。ヒアルロン酸は皮膚内では2〜3日で皮膚全体の半分が置き換わるほどターンオーバーを繰り返しており、また水との親和性が非常に強くこの性質が皮膚の水分量や皮膚の粘弾性に大きく関与する。老化した皮膚では粘弾性(ハリ)が減少するだけでなく、皮膚の厚さも減少し水分量も低下し、これがしわの発生に関与する。ヒアルロン酸は加齢により減少する事が知られており、また合成能力は低下するとの報告もあるためサプリメントでの摂取が望まれるが、吸収性で勝るN-アセチルグルコサミンで摂取する方が有利とされる。
N-アセチルグルコサミン
最近脚光を浴びている新素材。体内ではグルコサミンから合成される。ヒアルロン酸はN-アセチルとグルクロン酸の体内合成で作られるが、ヒアルロン酸として摂取すると分子量が大きい為に一度分解してからの吸収になるが、より分子量の小さいN-アセチルグルコサミンは吸収効率で優れており体内での利用率は3倍とされる。
関節を酷使するアスリートは是非摂取する必要があると思います。グルコサミンの摂取量は1500mg程度をJason Theodosakis博士は推奨しており、グルコサミン:コンドロイチン比は3:2(もしくは5:4)が理想的なようです。そして細胞内の水分保持の為の正しい水分摂取法が大切です。